
教育問題
インドネシアの抱える教育問題
インドネシアの教育問題は、貧困と密接に関連しており、特に教育の質や機会の不均衡が、貧困の世代間連鎖を引き起こしています。これらの問題は、インドネシアの国際的な学力評価であるPISA(Programme for International Student Assessment)の結果にも反映されています。
1. PISAの順位と現状
PISAは、経済協力開発機構(OECD)が行う国際的な学力調査で、15歳の生徒を対象に読解力、数学、科学の3分野で評価します。インドネシアはPISAに2000年から参加していますが、結果は一貫して低い水準に留まっています。
- 2018年のPISA結果では、インドネシアは79カ国中、次のような順位でした。
- 読解力: 72位
- 数学: 72位
- 科学: 70位
インドネシアの生徒たちの成績は、OECD平均を大きく下回っており、特に基礎的な読み書きや数的理解に課題があることが示されています。PISAの調査では、インドネシアの生徒の大部分が、テキストを深く理解し分析する力や、日常生活で役立つ数学的スキルを持っていないことが分かりました。
2. 教育と貧困の関連性
インドネシアの教育問題は、貧困問題と密接に関わっています。教育の質が低く、アクセスが不平等であることが、貧困からの脱却を難しくしているのです。
a. 地方と都市部の教育格差
インドネシアでは、都市部の教育機関は比較的設備が整っており、教員の質も高い傾向にあります。しかし、農村部や離島では、学校のインフラが十分でないことが多く、教育環境は劣悪です。多くの貧困家庭の子どもたちは、長距離を歩いて学校に通わざるを得なかったり、学校自体が遠隔地にないこともあります。また、教員の質も地域間で大きな差があり、農村部では資格のない教員が教えるケースも多いです。
b. 教育費の負担
貧困層にとって、教育費は大きな負担です。インドネシアでは、公立学校でも制服や教科書、授業料以外の費用がかかるため、低所得家庭の子どもたちは教育を受けられない場合があります。特に中等教育以上では、通学にかかるコストや、家庭が労働力として子供を必要とする場合が多いため、教育を続けることが難しいのです。
c. 教育の質の問題
PISAの結果が示すように、インドネシアの教育制度全体には質の問題があります。教員の研修や教材の質が不十分であり、特に地方の貧困地域ではこの傾向が顕著です。これが原因で、子供たちは十分な基礎学力を身につけることができず、結果的に高い賃金を得られる仕事に就くことが困難になります。
d. 教育の機会不平等
貧困家庭の子供たちは、しばしば初等教育を終えた後に学業を続けることができず、早期に労働市場に入らざるを得ない状況に置かれています。このため、教育を十分に受けられないことが、次の世代の貧困につながり、貧困の連鎖が生まれます。特に、女性や障害を持つ子どもたちはさらに不利な立場に置かれています。
新しい教育アプリケーションによるアプローチ
AIを活用した教育改革への取り組み
私たちは、インドネシアの教育問題を解決するために、AI技術を活用した新しい教育アプリケーションの公教育への導入を進めています。この革新的な取り組みは、インドネシア教育大学やインドネシア大学、インドネシアの文部科学省、そしてジョコ・ウィドド大統領政権や次期政権との協力により実現しています。
インドネシアでは、都市部と地方の教育格差や、教育の質の向上が長年の課題となっています。特に、リソースが不足している農村地域の子供たちが、質の高い教育にアクセスできる機会を増やすことが急務です。私たちが開発しているAIアプリケーションは、これらの問題を解決するため、個別指導に近い学習体験を提供し、子供たち一人ひとりの学習進捗に応じたコンテンツを提供します。
このアプリケーションは、リモート教育の可能性を広げ、デジタルデバイスさえあれば場所を問わずに学べる環境を整備します。教育の質を向上させると同時に、教師の負担を軽減し、効果的な指導を支援するツールとしても期待されています。
ジョコ大統領政権の支援のもと、私たちはこのプロジェクトを通じて、インドネシア全土の公教育の現場にAI技術を取り入れることを目指しています。次期政権とも密接に連携し、持続可能な教育改革を推進するための体制を整えています。このプロジェクトは、インドネシアの次世代を担う子どもたちに明るい未来を提供し、持続可能な社会発展に寄与するものです。
インドネシア教育大学との協定締結

2023年9月
インドネシア教育大学と教育アプリケーションの開発、普及に関する協定を締結しました。

上掲写真左から
Catur Iswanto 大統領補佐官、
Dewi Kusrini 日本語学科講師、
NGOマスクリエイトサービス代表梅田、
Bunyamin Maftuh副学長、
Ahmad Bukhori Muslim 国際局長、
Suhendra教授
インドネシア教育大学(Universitas Pendidikan Indonesia, UPI)は、インドネシアの教育分野において最も有名で歴史のある大学の一つです。教育者の育成に特化した高等教育機関として、国内外で高く評価されています。
概要と歴史
- 設立年: 1954年
- 所在地: インドネシアの西ジャワ州、バンドン市
- キャンパス: バンドンにメインキャンパスを構え、他にもインドネシア国内の複数の地域にサテライトキャンパスを持っています。
UPIは、当初、教師養成学校(Institut Pendidikan Guru)として設立されました。設立時の主な目的は、インドネシアの教育システムを支える教師を育成し、教育の質を向上させることでした。その後、大学に昇格し、現在では、教育分野だけでなく、他の多くの学問分野でも優れたプログラムを提供しています。